JALパックの社員である主人公遠藤(伊藤淳史さん)は成田空港で働いていますが、赴任時自分の仕事を「うちのお客様を出迎えて、航空会社のチェックインカウンターまで見送る…早い話、案内係って言うか…」と、多分接客するという仕事に関してあまり深く考えていないようなことを言っていましたが…
第2回の放送ではこの遠藤、スーパーバイザー(班長)になるためのテストとして、さんざん無理を言ってくる芸能プロダクションと、野坂すず子(演じているのは松原智恵子さん)という女性客のセンディングをすることになります。またこれをスーパーバイザーの今泉(柳葉敏郎さん)は「おもてなしのテスト」だと言っていました。
この野坂という客は、実はもう3年間ホノルル行きの予約を入れながら、いつも搭乗時刻前に居なくなり飛行機が出発してしまってから遅れたと言って戻ってくるという人でした。本来表面だけ見ればトラブルメーカーとも言えます…
でもこの女性の背景としては事情がありました…東京の息子や孫に会いたいがお嫁さんとうまくいっておらず、子供たちの勉強の邪魔になるから来ないで欲しいと言われているらしい。野坂は以前出発前に心臓発作で倒れその時に駆け付けた息子さんたちと会えたから今日のようなことを繰り返していると…
実は遠藤、この事実を知らされずに相手をすることになるのですが、案の定、野坂は搭乗時刻直前に姿を消し遠藤はがむしゃらに探し回ります。
しかし、同僚の女性センダー森尾(演じるのは桐谷美玲さん)に、
「お荷物、小さなカバンおひとつでしたよね。あれは東京のご家族のところへ行くためのもの、ホノルル行きのためのものではないです―中略―私たちがご出発させるのは東京なんです」
と言われたりしているところに、野坂がカウンターに現れます。
野坂が「ごめんなさいね…私ったらうっかりして。また飛行機に乗り遅れてしまったわ」と言って現れます。
スーパーバイザーの今泉はじめ事情を理解しているセンダーが次のような対応をし…
「私どもの方こそ大変申し訳ございませんでした。飛行機っていうものはつい時間通りに行ってしまうもんで…」
「いかがいたしましょう、明日以降でしたらホノルル行きの便お席をお取りすることができます」
そして「いつでも行けるからキャンセルするわ。出てきたついでに東京へ行って孫たちの顔見て帰ります」と答える野坂に…
「では息子さんにご連絡いたしますね」という応対をしています。
まあ、もちろんこれはドラマの中での話ですが現実の世界でも接客業の世界では表面的なマニュアル通りではない、お客様の心を汲んだこういうおもてなしの対応をしなければならないことも大なり小なりありますよね。
このドラマを見ていて以前、自動車の販売・修理のお店で働いていた事務職員仲間の話を聞いたことを思い出しました。
あるご年配の元お客様のエピソードです。
その方は高齢のせいもありますが認知症を発症され、ご家族からもう運転しないように…と言われ、数年前に車を処分してしまっていました。しかし時折お店にやってきて、
「自分の車はまだ車検終わってないのか?」と言われるそうなんです。
ここでお店の対応として、
「お客様の車は預かっていません。もう以前処分されたじゃないですか?」
と言ったらどうでしょう?
きっとその対応はお客様には受け入れて頂けないと思います。しかしそれは認知症という病気のため、ご自身の記憶と現実の状況が結びついていないからであって、心まで壊れてしまっているわけではありません。きちんと喜怒哀楽のある人です。
そこでそのお店のスタッフは…
「申し訳ありません、車検まだ終わってないんですよ。終わったらご連絡させていただきますね」
と言って納得していただき、ご家族にその方が店に来られていることをご連絡していたとのことです。
杓子定規の表面的な対応ではなく、お客様の心に添った対応ですよね(^^)
単なるマニュアルだけの仕事ではなく、相手の心を気づかうおもてなしや応対が出来る臨機応変さが必要なことを考えさせられた話です。
そしてそれが自然に出来るようになれば、仕事はもちろん人生の様々な場面で人とのかかわりを豊かにしていけるコツだと思いました。